
Si:では、最初は、お話ししてくださった方から簡単に、他の方の話について、あるいはご自身の話の補足など、関連したお話を頂き、やりとりの後、会場の皆様からの御質問を受けながらディスカッションしたいと思います。それでは小林さんからどうでしょう。
K: 最後に、村林さんが住宅デザインの価値という話をされました。私の方からは、ユーザー参加のコーポラティブ住宅のお話をしましたが、実はこの話は対立したものです。一人一人の好みでデザインするのがコーポラティブ住宅ですから普遍性を持っているわけではないのです。それで、この二つをどうやって両立させるかが長い間課題でした。その結論がスケルトンインフィルを分離するという考えです。建築の枠組みのスケルトンが普遍性、社会性を持つ。しかしインフィルについては個人の好みを反映させて、だいたい10年から15年で更新する。この考えは建築の考えから出ているのですが、しかしスパンを10年と1年とか、組み合わせると、私はいろんなものづくりの基本にある考えではないかと思います。それだけ補足です。
Si:ありがとうございます。佐々木さんはどうでしょう。
Sa:私は、千葉大が取り組んできた話題を提供させていただいたので、今私からの補足はございません。
Si:はい、それでは丁さんいかがですか。
T:私は、実際、皆さんはシェアハウスが世界にたくさんあると思われたかもしれませんが、海外調査をしてみますと、業者が個人大家から物件を購入または一括借り上げして、専門的に経営または管理しているところは、日本でしかみられないのです。海外のシェアハウスは、ほとんど同年代の知り合い同士がシェアするタイプで、学生たちの仮住まい的なものです。今、日本でのシェアハウスの居住者は、二つの傾向があり、経済性を求める層、家賃が高くても豊かな共有空間と他人との交流などを求める層がみられます。これまでワンルームしか選択肢がなかった単身者にとって、シェアハウスはもうひとつの住まいとして確立していくのではないかと言えます。
Si:はい。ありがとうございます。それでは村林さんどうぞ。
M: 小林先生の話ともつながるのですが、縮小社会の中でシステム的にリデザインしなければいけないところは、それは本質的に取り組まなければいけないのですが、当然並行して個別のリノベーション、コンバージョン等の小さい事業をつみあげとかそういうものを並行してやっていくことが重要であると、改めて思いました。
Si:はい、ありがとうございました。今回のテーマが人口縮小社会ということで非常に厳しい未来が見えている訳ですが、住まい方から街づくりを考えるという方向でお話が進みました。もうひとつ、これを前提としながらも、では、一般のデザインはどうなの?と考えることもできると思います。私は、自分自身がデザインするときにモノだけでなく、コトを考えないといけないと思っているので、これからの社会への対応という点に興味を持って参加しました。いろいろ広がりを持つテーマだと思っています。さて、今日おいでになった方々の中で質問、ご意見はありますか?
はい、どうぞ、お名前は。
Q:三橋と申します。ありがとうございました。人口縮小社会というテーマで先生方のお話しは核論としてはなるほどですが、どう人口縮小社会と繋がるのかということがよく分からなかったのですが、一つだ質問としては、丁さんがシェアハウスの話をされていました。それで最初に小林さんのほうから千葉大のシェアハウスが中止なったと聞いたのですが、なぜ中止になったのかをお聞きしたいです。小林さんの方から。
K:一言で言うと千葉大生の中で普及して自分達でやるようになりました。我々は借り上げる家賃と貸す家賃の差額をとっていかないと経営出来ないので。自主的にやれば差額がいらないので安くできると。それで完全に競争に負けたのです。
Q:競争に勝てば縮小社会でも使えるのですか?
T:実は私の観点では、6年間の中で、団地の住民の方が自分たちでマネジメントができればよかったと思います。なぜかというと、シェアハウスの実践に関わる中で、駅から遠い、家賃が通常より高いなど、ほかのシェアハウスと比べてもっと条件の悪いところがありましたが、その方達は、自分達で工夫して魅力的な要素に変え、問題を解決していく事で長続きしています。
K:一言だけ。人口減少社会との関係という御質問があったので追加します。シェアハウスというのは良い場所の一戸建てが空き始めていて、それに対する対応であって、あくまでも都市部の話なのです。それと同時に郊外も余計に空いてくるのです。その郊外に対する取り組みというのは今我々の課題で、例としては福祉サービス的な使い方はある程度立地が悪くても成立するとか、あるいは2戸を1戸に合わせて使えないか。そういうような課題にも取り組んでいます。
Si:どうでしょう。三橋さん。
Q:これからコンパクトシティというような縮小していく、都市自体が小さくなっていく中では成り立つということかもしれませんし、私も京都にずっといたので、町屋の話がありましたが、5軒くらいある長屋のうち3軒が今空き家の長屋があるのですが、女性の活躍している建築家が空き家を活用して、女性の小さな起業家を育てながら、縮小社会の中で一人一人が業を起こし、しかも女性が業を起こして自立していく。それを長屋の空き家を使って、コーディネーターが促進役をやっている方がいるのですが、小さなところの色んな芽が出てこないと全体の問題は解決しないかなと思います。
Si:ありがとうございます。他にどうですか?
Q:千葉科学大学のタカヤマと申します。今日は貴重なお話をありがとうございました。村林さんにお聞きしたいでのですが、リノベーション、イノベーション、コンバージョン。こう言うことはやはり社会システムとして構築していかないとうまくいかないと思いますが、これに対して国や地方自治体への取り組み、或いは、国の取り組みというのはどのステージにあるのでしょうか?
M: それは一つの大きなテーマになっており、積極的にやろうと。リノベーション、コンバージョンの事業者が色々いますので、そういう方と、コンバージョン対象となる住宅や店舗をお見合いさせるようなことを自治体の方で仕掛けて、中心市街地活性化の一事業にしようという動きはあります。ただ、個人的には、あまり行政が介入しなくてもちゃんとしたものがあればなんとか活用してやろうというニーズもでてきますので、そのような形が望ましいと思います。しかし、それに至るまでの過程に行政が介入して、エリアを特定して補助金を出す等はやる意義があるとは思っています。
流れとしては出てきつつあります。
Q:ありがとうございました。


Si:よろしいですか?ではその他どうですか?
Q:本日はありがとうございました。芝浦工業大学のオオサワと申します。街づくりに関して考えている中、行政の取り組みだけでなく地域住民が主体的に動くことによって、街づくりがよりよくなると考えられるのですが、発表のなかでシェアハウスや南医療生協の話で、そこに住まう人が自立をして、作っていくということですが、例えばコーポラティブ住宅のようなものだとニーズを持った人が設計段階から積極的に参加して自分から主張していけるのは分かるのですが、それ以外のシェアハウスでは自発的なモチベーションをどう維持させるか、また向上させるかという部分で方法があれば教えてください。
Si:佐々木さんお願いします。
Sa:南医療生協の話でいえば元々自分達が困っていたことから生協を作り出したのです。そのお金を自分達で出資したことで一つ段階が上がったと私は思っています。それは、自分たちが、お金を出した事で、この事業失敗させるわけにはいかないと、関わる人達はすごく働きます。近所のおばさんに声をかけて、どんどん出資を集めていきます。1つ逸話があるのですが、土地が空いていて、南医療生協にこの土地をあげるよと言うおじいさんがいたのですが、でも、その時に医療生協はお金を全然持っていなかったのです。それでその地域の人達に声をかけて一日イベントを開いて、近所のパン屋さんや蕎麦屋さんが出店を出してみんなで出資金を集めたところ、一日の売り上げで一千万円が集まりました。そのときに持ち出した皆さんのパワーは自分持っている100倍のパワーを出したかと思うのですが、自分がお金を出して、これは失敗できないと思ったときにでるパワーが南医療生協の力の元になっているのではないかと思います。
Q:プラスで質問なのですが、地域の話を考えるときに、昔からいた高齢者の人達は地域に対して積極的に働くとは思うのですが、新規の人達をどのように巻き込んでモチベーションを向上させていくかということはありますか?
K:街づくりでは、おそらく一人一人目的もちがうし、関心も違うし理解も違うので、そういう状況の中でどうやって合意を作りながら目標達成するかというテーマだと思うのですが。こういう時、我々のやり方は意見の違う二つのタイプがあるのです。まず前者でいうと、元々みんな人間違うのだから、合意する時何が大事かというと、こういう場面で笑いが発生することとか、あるいはなんとなく気持ち良くなるとか。簡単にいえば心理的な共感を呼ぶこと。人間は価値観というのが決まっているわけではなくて、対話しているうちに価値観は変わるので、価値観の変わる場面づくりが重要だというのが一つ。私はそうではなく後者派で、街づくりでは一人でも反対するとできない仕組みがあって、これは基本的にはできないと思われるのです。そうすると法律や制度の世界では最初に多数決でできる仕組みを、まず考える。そのための法改正を行う。その上で多数決で行うことに、皆で納得してもらう。この二つのプロセス。私は後者派なので、法や制度も取り組んでいます。ただ、両方とも大事です。
Si:よろしいですか。それではマイクをあちらに。
Q:今の話で、私も実は文京区内でコミュニティづくりや地域の様々なプランニングを担当しているのですが、地区計画の策定においては、まさに今小林先生が仰っていたような一人でも出来ないとダメという論理が先行するようで、これでは数ヘクタールに及ぶような、いくつものブロックをまとめなくてはいけないようなことはほぼ不可能。文京区では、ちなみに地区計画を市民主導でやった例は一例も無いということでした。このような仕組みでは、先ほど申し上げたことと関連しているのですけども、住民主導のものに対して積極的にサポート、インセンティブをつけるような仕組みが必要だと思うのですが、これに対してご意見などございますか?
M: 私も今、家の周辺で再開発がありまして、私自身が権利者なので対応が難しいですが、やはり住民の方はかなり勝手なことを仰るんですね。面的にやろうとした時には行政が主導的に出てこないと、まとめるのは難しいと思います。逆に、個別のリノベーション等は先に手を上げた人には、なんらかの支援をするというようなシステムを作った方が動くということですね。
手を上げた人に対して、周りの人はどうですかと話をしているとまとまらないので、一定のエリアを決めて、手を上げた人には支援をするという仕組みは必要かと思います。
T:先ほどシェアハウスでの居住者による自発的なモチベーションの質問がありましたが、海外調査をするとNPOのような組織が介在して、一人暮らしの高齢者住宅で、空いた部屋に若い学生さんを入居させ、孤独死を防ぐということと、若い人としては家賃が安く住めるというシェアハウス制度があります。お互い「共助」できる仕組みをNPOが10年近く行い、結果的にはには国や市町村が、それをきっかけとして動いてくれて、国の政策も変わったという例があるのです。
さらに公営住宅に長く住み続ける高齢者も増えているので、法律を変えて、又貸しができるようにして、年金以外にもある程度までの家賃収入が得られるように、空き部屋に若い人に入居してもらうという仕組みがあります。日本の場合、現制度上、これらのシステムの適用は難しいかと思いますが、今後検討して頂きたいです。実現まで時間はかかると思いますが、住民側やNPOなどの団体が先駆けて自主的に活動することによって、社会的に影響を与え、政策も変えられることができると思います。
Si:この議論をもっとやりたいところですが、時間がかなり厳しくなってきたので…よろしいですか。はい、どうぞ。最後になります。
Q:太田幸夫と申します。今回先ほど佐々木美貴さんが紹介してくれた本を読ませていただき、その時の印象一言で申し上げると今から40年位前日本でコーポラティブハウスと言う名前の動き始まり、その時に受けていた非常に素晴らしい可能性と成果に覚えた気持ちの高まりとほとんど同じ印象を受けました。私は一言で言って、その本質がどこにあるのかを今日持って帰りたいと、そういう気持ちで質問させていただいております。自治体のもともとのまちづくりの役割。そのために専門家と言える人がたくさんいるわけです。つまり我々はそのために税金を払っている訳です。そして全国に数え切れない団地がつくられて、例えば東京の西の方は、見渡す限りコンクリートの建物で埋め尽くされた。それがその後一体どうしたら良いのかと言う大きな歴史的、時代的課題に直面しています。本質とは、行政主体では生み出せないと言うことを申し上げたい。私が本質と言う形容詞で皆さんにお尋ねしたいのは「行政」と言う言葉がここに並んでおられる皆さんの発表、それから質問された出席者の皆さんから1つも出てこないわけです。そうするとすばらしい活動と成果は行政主体ではないな。結論的に私が言いたい事は、ここに並んでおられる今回の発表者。小林先生を初めにして、皆さんがそれなりに持てる力を酌み交わしながらベストを尽くして努力された。その中には1番本質的な時代を切り開く1つの認識、大まかに言えば哲学。そういうポリシーが共有されてこういう話が作られた。こういう成果が発表された。本質はそこにある。こういう風に思っていいのですか?どうですかと言うのが私の質問です。つまり並んでおられる方々の役割、立場、貢献これが具体的に1つなり二つなり示されて無いのです。それはみなさんが当事者だから、ついつい自分がどうしたと声高に言うことを控えられた。しかし、本質はもしかしたらそこにあるのではないかと。こういう素晴らしい成功を作られたこの当事者である、前に並んでおられる皆さん。ここにこの人的ネットワークと努力に最も重要なポイントがあると思って良いのでしょうか?
Si:では、一言ずつ。
K:ありがとうございます。まさにその通りで、住民が主体として参加し、専門家とともに作っていくと言うことによって、すこし様々な状況を変えて行きたい、あるいは人口減少社会に対応したい。という気持ちを表現したい、それで今日はお話をしたのです。
Sa:皆様お手元にありますこのパンフレットですが、開きますと今まで私たちが10年間日本の各地で、どんな先進的な事例が行われてきたのかをフォーラム通じて、発表してきたものが載っています。私たちは縮小社会を乗り切る手だてとして、もうひとつの住まい方が鍵になると信じています。今まで培った成果を次に伝えるために、この場を設けさせて頂きました。私はここの事務局を担っています。住まい方のフォーラムで、共生、参加の住まいを日本中に伝えることが私の使命でもあると思っております。
T:私も今日紹介出来なかったのですが、実は途中で中止になったシェアハウスの事例がたくさんあります。社会的に貢献できるモデルになると皆さんで頑張りましたが、最終的には、現法律や政策に壁があってできなかったということが何度もありました。
自分自身が悔しくて、なぜできないかかと思い、この数年間で海外調査をたくさん行ってきました。今、海外事例や政策・制度などの調査結果をまとめている段階です。これからきちんと裏付けを行った上で、日本でも、実現できる方法やプロセスなどを提示していきたいと思います。それで、皆さんにとって本当に必要なシェアハウスが何かを問いながら先進的なシェアハウスを実践していきたいと思っています。以上です。
M:我々は立場も専門も違うのですが、新しい社会に対して、「もうひとつ」は何かということを提議したいと思っています。もちろん住まいもそうですし、なんでもそうですが、もうひとつは何か、オルタナティブは何か。とういことを常に議論して追求していくという集まりですので、そういう共有意識を持ちながら、これをきっかけに、今日参加される方を含めて、もうひとつをどう模索して追求するかというネットワークが広がればいいと思っております。
Si:ほんとに重要なご質問、ご意見ありがとうございました。いろいろなお話がありましたが、実は私個人としては、この人口縮小社会にまつわることがらを考えた時に、本日お話くださったことは、もちろん大事なのですが、デザインに関係する人達も、もっとこれについて、考えるべきだと思っているのです。
さっき村林さんがリノベーションとコンバージョンの例を色々出されたとき、外国の場合、日本の場合は、と言われていましたけど、その時、私が思い浮かべたのは、日本の電線、電柱の並びです。例に上げられていた東京の西の団地の群れというのは、日本が経済的にグワーっと伸びていった時の産物なんですね。電柱、電線の並びも同じで、日本は、いま忙しい、いま儲けなきゃいけないっていうことで、ロングレンジで考えることをしないでやって来た結果でしょう。同じ筋道で、例えば工業生産品ガンガン売ってくっていうことにデザインは貢献してきたわけですけども、基本をもう少し考えていかないとあぶないのでは無いかなという風に思っています。ですから今日は、人口縮小社会というテーマで皆さんに来ていただいているわけですが、私にしてみると、もっと幅広いデザインの関係の方々にも聞いて頂いて、それぞれの立場からのご意見をお聞きしたかったな、という思いもわいてきます。それにしても、興味深いお話の数々、本当にありがとうございました。時間をオーバーして申し訳ございませんでしたが、人口縮小社会住まい方から街づくりを考えるというセッションを、ここで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。